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京都地方裁判所 昭和53年(行ウ)23号 判決 1982年12月17日

原告 昭和映画株式会社

被告 東山税務署長

訴訟代理人 家藤信正 高須要子 西峰邦男 野村年彦 村田巧一 外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が原告に対し昭和五二年二月二八日付でなした原告の昭和五〇年一〇月一日から昭和五一年九月三〇日までの事業年度分法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

請求原因

1  原告は、映画の製作、配給、不動産の売買及び賃貸等を業とする会社であるが、昭和五〇年一〇月一日から昭和五一年九月三〇日までの事業年度(以下「本件係争事業年度」という。)分の法人税につき確定申告書に別表一の(一)のとおり記載して確定申告期限までに青色申告したところ、被告は、昭和五二年二月二八日付で、別表一の(二)のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした(以下「本件各処分」という。)、原告は本件各処分につき同年四月二八日付で国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は昭和五三年六月二六日付でこれを棄却するとの裁決をなし、同年八月八日ころ裁決書が原告に送達された。

2  しかし、本件各処分は、租税特別措置法(昭和四九年法律第一七号による改正前のもの、以下「措置法」という。)六五条の七の適用を誤まつた違法があるので、取消を求める。

二 請求原因に対する認否

請求原因1は認め、同2は争う。

三 被告の主張

1  本件各処分の経緯及び適法性

(一)  原告は、昭和四七年一〇月一日その所有にかかる京都市内に所在する土地・建物を九五〇〇万円で譲渡し、これにつき昭和四七年一〇月一日から昭和四八年九月三〇日までの事業年度(以下「四八年九月期」という。)の確定した決算において、措置法六五条の七第一項の規定により、別表二記載のとおり八七五九万円を特別勘定として経理し、この金額を損金の額に算入した。

原告は、昭和四八年一一月三〇日右特別勘定経理を含む四八年九月期の法人税確定申告書を提出したが、別表三記載のとおり、同日右特別勘定にかかる買換資産を取得する期間につき、措置法六五条の七第一項かつこ書の規定により、同法施行令三九条の六第一八項所定の申請書(以下「承認申請書」という。)を被告に提出し、さらにそれ以降二回にわたり承認申請書を提出して、最終的には昭和五一年九月三〇日までと買換資産の取得指定期間の認定を受けていた。

そして、原告は、右買換資産の取得指定期間の最終日の属する本件係争事業年度の法人税確定申告書で、右事業年度中に、大津市下阪本町字寺田七七三番一田三七六平方メートル(以下「甲物件」という。)、同所七七三番二田一八三一平方メートル(昭和五一年七月九日分筆、以下分筆後の同所七七三番六田九八〇平方メートルを「乙物件」、同所七七三番二田八五〇平方メートルを「丙物件」という。別表四参照)を六五四四万一三九〇円で取得したとして、被告に申告をした。

(二)  これに対し、被告は後に詳述するとおり、次の内容の本件各処分をしたもので(別表一の(二)参照)、本件各処分に何ら違法なところはない。

(1) 原告において甲、乙、丙物件を取得指定期間内に取得したとしてこれを圧縮記帳し、損金に算入した金額六〇三三万六九六一円のうち、甲、丙物件に対応する金額三三五二万〇五二八円は、措置法六五条の七第二項にいう「取得をした場合」に該らないから、同条四項一号を適用してこれを益金の額に算入した。

(2) 原告において申告した期末特別勘定残額二七二五万三〇三九円を、同条四項二号を適用して益金の額に算入した。

(3) 原告において翌期へ繰越す欠損金として申告した金額五〇万九〇一七円を、法人税法五七条を適用して損金の額に算入した。

(4) 右(1)ないし(3)の更正処分に伴い国税通則法六五条一項を適用して過少申告加算税一一六万三二〇〇円の賦課決定処分をした。

2  三三五二万〇五二八円を益金の額に算入したことについて

(一)  措置法六五条の七にいう買換資産の取得については、「取得には、措置法六五条の六第一項の表の第一二号の場合を除き、建設及び製作を含むものとし、贈与・交換・出資又は代物弁済によるものを含まないものとする。」旨を規定しているが(措置法六五条の六第一〇項二号、措置法施行令三九条の六第一二項)、ここにいう「取得」とは、日常用いられている「取得」を意味し、私法上の効果としての所有権の移転をいうものである。

(二)  取得する物件が農地である場合、その権利の移動については農地法三条または五条に規定する許可申請または届出を要するところであり、右許可申請または届出に基づく許可または届出の効力を生じた通知等(以下「農地法所定の手続」という。)を受けずに行なつた権利の移転または設定に関する行為は、その効力を生じないとされている。

本件の場合、甲、乙、丙物件は市街化区域内に所在する農地であり、原告が甲、乙、丙物件を取得するためには、滋賀県知事に対して農地法五条一項三号に規定する届出を行なうか、あるいは同法五条一項本文に規定する許可を受けなければその所有権移転の効力は生ぜず、原告は、甲、乙、丙物件を取得することができない。

そして、甲、乙、丙物件について右に述べた農地法上の規制が存在すること、農地法所定の手続を行なわなければ原告において甲、乙、丙物件を取得できないことは原告も熟知しており、このことは原告が被告に対し提出した承認申請書に設定期間の延長を必要とする理由として原告自らが記載している内容から明らかである。

(三)  また、原告が売主福井清六(以下「福井」という。)との間に締結した売買契約によれば、(1)取引期日については農地法五条の許可通知があつた日から三〇日以内とされ(売買契約書第三条)、(2)停止条件として所轄知事に対し農地法による許可申請をするものとされ(同第六条)、(3)また、所有権移転の時期として、甲、乙、丙物件の所有権は残代金を支払い、かつ、登記申請書類を交付した時に移転するものとされており(同第七条)、(4)さらに、契約解除について転用許可が却下されたときまたは農地法五条の許可申請の日から三か月以内に許可がないときは契約日に遡つて本契約は効力を失うものとする(同第一二条)旨定められている。

(四)  しかるに、甲、乙、丙物件についてなされた売買契約代金、その支払状況、農地法関係手続及び所有権移転登記は別表四記載のとおりであり、これによれば、原告は、甲、丙物件については被告認定にかかる取得指定期間である昭和五一年九月三〇日までに農地法所定の手続を行なつておらず、かつ、契約条項の履行もされていないのであるから、この時までに原告が甲、丙物件を取得していないことは明白である。

(五)  原告が取得指定期間内に甲、丙物件を取得していないことは、次の事実からも明らかである。

(1) 原告は昭和五一年九月九日付で「御願」と題する文書を福井に対して差し出しているが、右文書には、原告において「………現在有姿の休耕田としての農地法に抵触せざる様に当社の責任に於て使用方御承認賜り度此段お願い致します。」とし、福井において「右契約の全土地買取方確約の上承認致します。」とする旨の記載があり、右時点で引続き福井が甲、乙、丙物件を所有していることは明らかである。

しかも、右文書は、原告が申告において甲、乙、丙物件を取得したとしている昭和五一年八月三〇日以後において作成されたものであり、もし原告が甲、乙、丙物件を同日に取得したものであれば、必要でない文書である。

(2) また、甲、丙物件については、前記取得指定期間後において、福井が所有者として農地法四条一項五号の規定に基づき滋賀県知事に対して農地転用届出を行なつている。

(3) さらに、原告は、昭和五二年一月二七日、本件係争事業年度終了の日までに買換資産を取得し得なかつたとして、被告に対し承認申請書を提出している。

(六)  農地の売主は買主のため知事に対して所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、もしその許可があつたときには所有権移転登記手続をなすべき義務を負うに至るのであり、これに対応して買主は売主に対し、かかる条件付権利を取得する。

そして、現実には、転用許可があるまでの間においては、土地そのものでなく、右に述べた買主の売主に対する条件付権利、具体的には土地引渡請求権ないし知事の許可を条件とする農地の売買契約上の権利(以下「転用未許可農地に係る権利」という。)が転々と売買されている。

本件の場合、原告が甲、丙物件に関して取得したのは右に述べた転用未許可農地に係る権利というべきである。しかして、措置法六五条の六第一項に規定する買換資産とは、土地そのものを利用することを目的とする権利をいい、転用未許可農地に係る権利のように土地そのものを利用することを目的としない権利までも含むものではない。

(七)  以上述べたとおり、原告が甲、丙物件を取得していないことは明らかである。

(八)  益金の額に算入した金額三三五二万〇五二八円は、次のとおり計算した。

(1) 乙物件の売買価額 二七九九万二三五五円

乙、丙物件の売買価額五二三〇万円を乙、丙物件の面積比により按分計算した。

(算式)

52,300,000円×980m2/980m2+851m2=27,992,355円

(2) 乙物件の取得に要した費用 一〇九万二七一四円

(イ) 乙物件の取得に直接要した費用 二九万六八四〇円

沢司法書士への支払額である。

(ロ) 乙、丙物件の取得に要した費用のうち、乙物件にかかるもの 一万三九一六円

菊地測量事務所への支払額二万六〇〇〇円を前同様面積比により按分計算した。

(算式)

26,000円×980m2/980m2+851m2=13,916円

(ハ) 甲、乙、丙物件の取得に要した費用のうち、乙物件にかかるもの 七八万一九五八円

田中不動産への支払額 一〇〇万円

菊田道路への支払額 六万円

樫和建設への支払額 五万一〇〇〇円

北居設計株式会社への支払額 六五万円

右合計一七六万一〇〇〇円を前同様面積比により按分計算すると七八万一九五八円となる。

(算式)

1,761,000円×980m2/376m2+980m2+851m2=781,958円

(ニ) (イ)+(ロ)+(ハ) 一〇九万二七一四円

(3) 乙物件の取得により損金算入を認められる額 二六八一万六四三三円

乙物件の取得に要した価額に前述差益割合(別表二の<3>)を乗じた価額が乙物件の取得による買換資産の圧縮限度額となり、損金算入を認められる金額となる。

(算式)

(27,992,355円+1,092,714円)×0.922=26,816,433円

(4) 原告が本件係争事業年度の確定申告書に買換資産の取得による買換資産の圧縮限度額として記載し損金算入をしている金額六〇三三万六九六一円のうち、(3)の金額を超える金額が措置法六五条の七第四項一号により益金の額に算入すべき金額となる。

(算式)

60,336,961円-26,816,433円=33,520,528円

3  期末特別勘定残額二七二五万三〇三九円を益金の額に算入したことについて

原告は、本件係争事業年度の確定申告書の別表十三(五)、特定の資産の買換えにより取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書に、二七二五万三〇三九円を期末特別勘定残額として記載して申告しているが、前述したとおり取得指定期間の最終日は昭和五一年九月三〇日までであるので、右金額を措置法六五条の七第四項二号を適用し益金の額に算入した。

4  繰越欠損金五〇万九〇一七円を損金の額に算入したことについて

原告は、本件係争事業年度の確定申告書に翌期へ繰り越す欠損金を五〇万九〇一七円として申告しているが(別表一参照)、以上の更正処分に伴いこれを損金の額に算入した。

5  過少申告加算税一一六万三二〇〇円の賦課決定処分をしたことについて

以上の更正処分により原告の納付すべき税額は二三二六万五五〇〇円となるので、これに対し過少申告加算税の賦課決定処分をした(別表一参照)。

(算式)

23,265,500円×5%=1,163,200円

四 被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1の(一)は認める。(二)のうち、本件各処分の内容が被告主張のとおりであることは認めるが、その適法性は争う。

同2の(一)は争う。(二)のうち、甲、乙、丙物件が市街化区域内に所在する農地であることは認める。(三)は認める。(四)のうち、甲、乙、丙物件についての売買代金、その支払状況、農地法関係手続及び所有権移転登記が別表四記載のとおりであることは認め、その余は争う。(六)及び(七)はいずれも争う。(八)の計算方法は争わない。同3ないし5は認めるが、その適法性は争う。

2  原告は、以下に述べるように、被告の承認した取得指定期間である昭和五一年九月三〇日までに甲、乙、丙物件全部を取得し、その後一年以内にこれを事業の用に供したのであるから、措置法六五条の七第二項に基づいて本件係争事業年度の法人税確定申告書で買換資産圧縮損として六〇三三万六九六一円を損金に算入したものであつて、右算入は正当である。

(一)  措置法六五条の七等により特定資産の買換えの場合の圧縮記帳制度が認められている根拠は、企業の過密地域からの追出し及び誘致地域への誘致という政策目的を実現するため、企業が既存の事業用資産を売却して新たに事業用資産を取得しようとする場合に、右の目的に合致する形態のものに対し課税上の優遇措置を行なうことによつて、実質資本の維持を可能とすることにある。ただ、この制度を悪用し、買換えと称して資産売却益を損金処理しながら、いつまでも買換資産を取得しないで課税を不当に遷延させる脱法者を防遏するために、取得期間が限定されているものである。

右圧縮記帳制度の趣旨からすれば、資産を「取得した」か否かは、企業が脱法的意図によつてではなく真摯に事業用資産の買換行為を行なつていると認められるか否か、次いで社会的経済的事実として「取得した」と評することができるか否かを基準として判断すべきであり、必ずしも法的に所有権が移転したことと同意義に解する必要はない。

(二)  買換資産の取得時期の決定は、対象物件が当該企業に帰属し資産を構成する時期がいつであるかの問題でもある。

法令上資産の帰属時期についての決定基準を定義したものはないが、これは定義するまでもない自明の事柄だからではなく、資産概念が簿記会計上のものであることに由来しているからである。すなわち、資産は、貸借対照表上、負債と対置して、資本維持、配当計算、投資家に対する情報提供に資せんとする概念であるとされているが、いかなるものを資産と見るか、いつそれが企業に帰属したものとして取扱うかは、右の目的に照らしてこれを決すべきものである。したがつて、これについて具体的には必ずしも法律的観察によらないで、経済的観察によるのが簿記会計上の慣行であり、法がこの点について別段の定めをしていないことは、この慣行を是認し、これに従つて処理すれば足りるとの趣旨に解すべきである。

しかして、簿記会計上の慣行である経済的観察ということには、必然的に取引の諸要素の総合判断が伴うから、結局、社会的経済的事実として取得したと評することができるか否かを、資産取得の判断基準とするということと同じである。

したがつて、簿記会計上の慣行に従つて処理すれば足りるという法の趣旨に照らすと、企業が経済的観点から行なつた処理は、簿記会計の目的からみて不合理でない限り、税務上も是認されるべきである。

資産として土地が取得される経過をみると、売買契約の締結と手付金の支払、中間金の支払と仮登記、物件の引渡、残代金支払、所有権移転登記の順で進み、確定的に企業の資産となる。このうちの中間金の支払と仮登記により履行の着手があつたこととなり、以後、手付契約に基づく解約ができないこととなる(民法五五七条一項)ので、この時点で残代金債務及びその支払を条件とする所有権移転が確定する。したがつて、特別の事情がない限り、簿記会計上、手付金及び中間金の合計額を仮払金として計上するだけで残代金債務及び物件を表面に出さないで処理することは、企業の真実の財産状態を示すものではないから、適当とはいえない。むしろ、土地を資産に計上し、残代金債務を負債に計上するのが合理的といえる。よつて、本件の場合も、右の時点をもつて買換資産の取得があつたものと解すべきである。

(三)  被告は、「取得」とは日常用いられている取得を意味し、私法上の効果としての所有権が移転することをいうと主張するが、買換特例でいう買換資産は、措置法六五条の七第一項の表の一欄にあるとおり、所有権だけでなく、地上権、賃借権等をも含むのであるから、被告の主張するような基準で決定できないことは明らかである。

また、対象を所有権に限定しても、私法上の効果として所有権の移転することと解釈することは、極めて不合理な結果を招来する。民法は物権変動につき意思主義をとつているから、口頭または書面の意思表示だけで所有権が移転するが、このような意思表示があつたというだけでそのものが企業の資産を構成すると扱い、これを財産目録や貸借対照表に計上することは、明らかに企業の簿記会計の目的に反し、その慣行からも到底容認されない。

簿記会計上の慣行では、法律上所有権を有していても経済上自己の所有に属しないとき(例えば、問屋が委託者のために買入れた物品)は資産とせず、逆の場合(例えば、譲渡担保に供した物品)は資産とするのであり、また、所有権の帰属時期は、目的物の現実の帰属によつて決するのが通常であり、実際目的物を入手するまでは資産としない。また、企業が高価な機械、自動車、建設機械等を購入する場合、割賦販売、分割払、リース取引等の方法が多くとられるが、通常、割賦金、分割払金、リース料が完済されるまで物件の所有権は売主やリース業者に留保され、企業に移転しないにもかかわらず、これを自己の資産として減価償却を行なうことが簿記会計上の慣行により是認されている(賃貸借との関係で問題のあるリース取引についてさえ、租税通達は、これを認めている。)。

これらは、被告のいう私法上の効果云々が企業の簿記会計の実情とかけ離れた不当な解釈であることを示している(なお、被告のいう「日常用いられている取得」と「私法上の効果として所有権の移転すること」とは、必ずしも一致しない。「日常用いられている取得」という言葉は、「入手する」または「自分のものにする」という意味であるから、むしろ原告の主張する意味に近い。)。

本件では、甲、乙、丙物件が農地であるため売買契約のみによつては所有権は移転しないが、これにより一定の財産上の地位を生ぜしめるから、一個の資産としての意味を持ち、また、本件売買契約に付された所有権留保条項も担保的機能を持つにすぎないから、いずれも企業への帰属を否定する要素にならない。

(四)  措置法六五条の七第二項にいう取得の意義を定義したものは、同法及びこれに基づく政令、規則、通達のいずれにもないので、その意義は、同法の他の条文で用いられている取得という用語についてこれを定義した通達があれば、それを参酌して決定するのが妥当である。

(1) 措置法関係通達六三(一)―四(昭五一直法二―六改正)によると、「措置法第六三条の規定を適用する場合において、法人の有する土地等を取得した日とは、当該土地等の引渡しを受けた日をいうものとする。ただし、引渡しの日に関し特約がある場合を除き、当該土地等の売買代金の支払額(手付金を含む。)の合計額がその売買代金の三〇パーセント以上になつた日………以後引渡しまでの間の一定の日をもつて法人がその取得の日としているときは、これを認める。」と定められ、同通達六三(一)―五(同右)によると、右「引渡しの日に関し特約がある場合」について、「単に代金完済後所有権移転又は引渡しを行う旨の条件が付されていてもここにいう特約がある場合には該当しないものとする。」と定められている。

これらの通達は、取得の日の判定いかんによつては同じような譲渡で重課されるものとそうでないものとが生ずることとなるため、画一的な基準を定めたものである。そして、画一的な基準を定める必要があるのは課税の公平を期するためであることは明らかであり、このような要請は本件のような特定資産の買換えの場合にも均しく当てはまる。

また、これらの通達は、取得の時期を被告の主張する如く「法的に所有権が移転した時期」としていない。民法上は、売買契約と同時に所有権が移転し、特約のあるときはその定めた時期に移転するものであるのに、右通達はかかる観点からではなく、引渡を受けた日を原則として、その他に代金の三〇パーセント以上を支払つた日から引渡の日までの選択を認めている。このような解釈が何ゆえになされているかといえば、取得の時期を、経済的社会的行為として取得したものと評価できるか否かの観点から判断するのが課税上妥当であるとの思考を根底においているからである。このことは、流通税たる性格を有する後述の不動産取得税の場合を除き、買換資産の取得や、法人税法で問題となる減価償却資産や棚卸資産の取得時期の判定についても均しく当てはまる。

(2) 法人税基本通達二―一―三によると、「固定資産の譲渡による収益の額は、その引渡しのあつた日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、法人が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日以後引渡しの日までの間における一定の日にその譲渡による収益が生じたものとして当該日の属する事業年度の益金の額に算入したときは、これを認める。」と定められ、所得税基本通達三六―一二によつても、「山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあつた日によるものとする。ただし、当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があつたときは、これを認める。」と定められ、前記(1)の「土地等の取得時期」と表裏の関係にある「譲渡所得の収入時期」について、やはり「引渡し時期」が一つの基準とされ、そのうえで納税者による収入時期の選択が認められている。

(3) 措置法関係通達六三(一)―七(昭五一直法二―六)によると、「措置法第六三条第一項第一号に規定する土地の上に存する権利には、地上権、土地の賃借権及び地役権のほか、転用未許可農地の価値が反映している契約上の権利で現実に取引の対象とされているものを含むものとする。この場合において、当該未許可農地の権利に係る土地を取得するに至つたときは、当該土地は、当該権利の取得の日から引続き有していたものとして取扱う。」と定められているから、転用未許可農地(転用未届出農地も同様である。)の取得は、同農地にかかる売買契約成立時(農地の上の所有権移転請求権取得時)にまで遡及して認められていると解しうる。

改正租税特別措置法(昭四八年四月改正)等の施行に伴う所得税(土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例関係)の取扱いについて(昭和四九年一月三一日直所二―四)第二―三によると、「農地法第三条第一項………第五条第一項本文………による許可を受けなければならない農地………又は同項第三号の規定による届出をしなければならない農地………を、昭和四四年一月一日以降に他の者から取得して譲渡した場合には、その取得又は譲渡が当該許可を受けないで、又は当該届出をしないで行われたときであつても、その譲渡による所得については、措置法第二八条の六第一項の規定の適用がある。」と定められているから、売買契約の成立だけでも農地の取得を認めていると解しうる。

なお、農地法三条または五条の許可届出が未了であつても、その買主たる契約上の地位を譲渡することは可能であり、一般に、当初の売買契約につき所有権移転請求権保全仮登記を行ない、以後の譲渡は右仮登記の移転という形式で転々取引されていることは、衆知の事実である。このような契約上の地位の譲渡に、登記書類、代金全額の授受、物件引渡は、登記書類の有効期間の制約、許可の未確定による危険負担などがあるため、必ずしも随伴していない。

(4) 地方税依命通達不動産取得税三(2)によると「不動産の取得の時期は、契約内容その他から総合的に判断して現実に所有権を取得したと認められるときによるものであり、所有権の取得に関する登記の有無は問わないものであること。ただし、農地法の適用を受ける農地………を承継取得した場合の取得時期は、同法第三条一項又は第五条第一項の規定による道府県知事の許可があつた日であること。」と定められているが、これは不動産取得税が不動産の取得に担税力を見い出し、これに対して課税する流通経路であつて、形式的に不動産所有権の移転または原始取得の事実があれば、そのことだけで課税され、取得者の得た実質的な利益に着目して課税されるものではないという性格から出てくるものである。したがつて、法人税に関する特定資産の買換の場合の圧縮記帳制度にいう「土地等の取得」の解釈については、その性格を異にするため右通達の趣旨を及ぼすことは適切でなく、制度本来の趣旨に照らして考えることが当然である。

(五)  以上の観点から、以下に記す諸事実を総合的に判断すれば、本件の場合、原告が取得指定期間である昭和五一年九月三〇日までに甲、丙物件を取得したものと評するに十分である。

(1) 原告は、本件買換制度の政策目的に合致する買換えを行なうべく、

(イ) 昭和四七年一〇月一日京都市上京区千本通下長者町上ル革堂前之町一一六番及び一一八番の土地建物(措置法六五条の六第一項別表一の上欄ロに該当)を代金九五〇〇万円で売却し、

(ロ) 昭和四八年一月二二日福井から甲、乙、丙物件(同条項別表一の下欄イに該当)を代金六三〇〇万円で買受けた(ただし、甲物件は渡辺勉名義で買受けたものである。)。

(2) 甲、乙、丙物件は、農地法五条一項三号に規定する「市街化区域内」にある農地であり、同条項によつて明らかなとおり、その権利移転については知事の許可が必要なのではなく、単に知事に届出ることで足りる。法律上の権利移転の効果の発生が、売買契約当事者の届出行為だけにかかつている場合には、その届出行為は当事者がいつでも任意になしうるため、売買物件の所有権は、ほとんど買主のもとに移転しているといえる。この点において知事の許可を必要とする農地の売買と格段の相違がある(被告は、本件各処分前から、審査請求を経て、本件訴訟に至つてもなお、甲、乙、丙物件が市街化区域内の農地であることに気付かず、知事の許可を要するものと軽信して、本件各処分に及び、審査請求において答弁を行ない、本件訴訟でも当初その旨主張していたのであり、既にこの点において違法たるを免れない。)。

(3) 原告は、前記売買契約締結に当り契約書を取交わしているが、契約書の体裁からも明らかなとおり、手付金支払の後は残金を一括支払する場合の定型用紙を使用しているため、条項中には中間支払後の解約についての定めはない(第一二条は手付金支払だけの場合の規定である。)し、契約書外で合意したこともない。しかして、原告は、契約に従い昭和四八年二月二八日に中間金一四〇〇万円を支払つたので、民法五五七条により履行に着手したこととなり、解約ができない状態に至つた。

(4) 原告は、前記のとおり、同年一月二二日売買契約と同時に手付金六〇〇万円を、同年二月二八日に中間金一四〇〇万円を支払い、売買代金総額六三〇〇万円の約三二パーセントに相当する代金の支払いを了している。そして、乙、丙物件については、大津地方法務局昭和四八年三月一日受付第四七五八号をもつて所有権移転請求権仮登記を受けた(甲物件については、手付金及び中間金は原告が支払つたものの、渡辺勉との調整がついていなかつたので仮登記は留保した。)。

(5) 甲、乙、丙物件は、前記売買契約成立後、福井も一切使用せず、むしろ、原告が土地買受人として、昭和五一年六月二日隣地所有者と現地立会のうえ境界確定の協議を行ない、自らの申請により、(イ)昭和五〇年九月一〇日付で都市計画法二九条による開発許可申請の事前手続として「開発計画事前審査願」を提出し、同年一一月六日付でその審査結果の通知を受け、(ロ)昭和五一年六月九日甲、乙、丙物件と隣接里道との官民境界の確定通知を受け、(ハ)同年七月八日文化財保護法に基づく埋蔵文化財の発掘確定調査を受け、(ニ)同年八月二六日隣接道路につき道路法二四条の許可を受け、さらには後記3(二)(3)(リ)記載のとおり甲、乙、丙物件全部を事業の用に供する方針を決定し、同年九月九日福井から甲、乙、丙物件全部の使用承諾を取付けて使用に着手したから、遅くとも同日には甲、乙、丙物件の引渡しを受けている。

(6) 原告は、甲、乙、丙物件の固定資産税を、昭和五一年度分から負担している。

(六)  また、原告がとつてきた簿記会計上の処理は次のとおりであり、これが簿記会計上何ら不合理なものでないことは明らかである。

(1) 甲、乙、丙物件は市街化区域の農地なので、転用目的の売買であつても届出だけで行なえ、市街化調整区域の農地のように知事の許可という強い制約がないから、企業への帰属の有無を決定するに当つては、農地であることは重要な要素とはならない。むしろ、一定面積を超える農地の転用届出は、都市計画法二九条の開発許可をあらかじめ受けたうえでないとできないとされているので、開発許可を受けられるか否かが重要なのである。

(2) 開発許可の可否は、接道条件(甲、乙、丙物件を宅地化するためには一定幅員の公道に接していることが要件とされている。)にかかつており、本件売買契約時にはこの条件を満たしていなかつたが、湖西線建設のために敷設されていた湖西線側道が湖西線開通と同時に大津市に移管され、甲、乙、丙物件に接する公道となることが確実であつたので、原告は、条件を満たしうると判断して甲、乙、丙物件を買受けた。

(3) 原告は、売買契約締結と同時に手付金を支払い、さらに契約どおり中間金の支払をし、仮登記を受けた(甲物件は、買受名義人渡辺勉と原告の間で交渉中のため、仮登記を受けることを留保したが、原告において手付金、中間金とも支払を了していたからこれを受けることは可能であつた。)ので、前記(五)(3)に記したとおり、中間金支払日である昭和四八年二月二八日には売買契約の効力が一応確定したが、ただ、特別の事情として、開発許可申請の不許により失効する可能性が残されていたので、昭和四八年から昭和五〇年まで各九月末決算では、手付金及び中間金を仮払金とし、従前地処分による利益は買換資産特別勘定に計上してきた。

(4) 湖西線は、予測どおり、昭和四九年七月に開通したが、側道の大津市への移管は、大津市と鉄道建設公団双方の内部事情によつて容易に実現しなかつた。しかし、昭和五〇年九月ころに至つて移管の見通しがついたのか、原告の開発計画事前審査願は、同月一〇日付で漸く受理され、同年一一月に許可条件が示された。

(5) 原告は、開発許可条件を満たすべく最大限の努力をしたが、後述のとおり埋蔵文化財について大津市と協議すべしという予想外の条件の出現及びその大津市における処理遅延により、昭和五一年七月初めに、同年九月末までに開発許可を受けて農地法による転用目的の所有権移転の届出手続を履践することは不可能であることが判明した。

(6) 原告は、これに先立ち、昭和五一年初めころには甲、乙、丙物件を宅地化し、住宅金融公庫の低利融資により低家賃低額敷金の賃貸用共同住宅を建築する事業計画を定め、右開発許可の不能が判明するころには、公庫融資や建築業者も定まつていた。この事業計画は、本件買換え用土地建物取得費相当額につき土地譲渡税が課税されると成立しないものである(土地取得費等が高すぎることになり、公庫が制限するような低条件では赤字となる。)。

(7) そこで、原告が大津市担当者に窮状を訴え相談したところ、開発事前審査で示された条件を大部分満たしていることを考慮し、開発許可の不要なように、甲、乙、丙物件を細分化して転用届出することを便宜認めるとの意向が示されたので、原告は、昭和五一年七月初め、甲、乙、丙物件を細分化して順次原告や売主福井名義で転用等の届出を行ない、事業計画を推進することを決定した。

(8) 原告は、まず昭和五一年七月九日、七七三番二のうち九八〇平方メートルを分筆して同番六とし(乙物件)、同月二八日付で転用等の届出を行ない、同年八月三〇日付で受理された。次いで、同年九月九日売主福井から甲、乙、丙物件全部の引渡を受け、翌一〇日フドウ建研株式会社をして整地工事に着手せしめ、同月二二日同会社に対し正式に共同住宅建築を発注した。

(9) 原告はさらに、同年一〇月一五日土地代金の一部一五〇〇万円、同月二五日同じく五〇〇万円(同年一一月から昭和五二年三月まで毎月二七日を支払期日とする額面一〇〇万円の約束手形五通)をそれぞれ支払い、同年一一月四日付で売主福井名義による転用届出(同月二七日付受理)を了し、同月中には建物基礎工事も完了していた。この間に、乙物件につき、同年一〇月一六日付で所有権移転登記を受けた。

(10) 原告は、昭和五一年一一月三〇日、以上の状況のもとで、本件係争事業年度の決算をするに当り、甲、乙、丙物件全部が自己に帰属したものと判断し、買換資産特別勘定のうち、土地代金に応当する部分を取りくずして損金計理した。

(七)  仮に以上の甲、丙物件の取得時期についての原告の主張が認容されないとしても、甲、丙物件の取得が遅れたのは、後記3記載のとおり、予測不可能な、原告の責に帰せられないやむを得ない事情によるものであるから、予備的に、甲、丙物件についても、措置法六五条の七第二項にいう「取得をした場合」に該り、同条四項一号によつて益金算入を行なうことは許されないものであると主張する。

(八)  事業の用に供した事実

原告は、昭和五二年三月二二日原告の会社の目的である賃貸住宅及び駐車場の経営のために、乙物件上に共同住宅を建築してこれを賃貸し、甲、丙物件を賃貸駐車場とし、いずれも事業の用に供した。

3  原告が本件係争事業年度の確定申告書に期末特別勘定残額二七二五万三〇三九円を計上したのは、措置法六五条の七第一項の定める期間内に、予測不可能な、原告の責に帰せられないやむを得ない事情で資産を取得し得なかつたためであり、このような場合にまで同条四項二号を適用して期末特別勘定残額を益金の額に算入することは許されない。

(一)  法的根拠

(1) 取得期間限定の妥当範囲

措置法施行令三九条の七第一一項は、取得が遅れてもやむを得ないとする事情を、宅地の造成、工場の建設及び移転に要する期間が通常一年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情がある場合と定めている。これらの事情は、専ら工場施行上の技術的、物理的な事情を指している。そして、技術的物理的事情による取得所要期間が予め予測可能なことは、事柄の性質上明らかである。したがつて、右取得期間の限定は、納税者の責任で判断できる取得所要期間を三年に限定しているものにすぎず、納税者の責によらない予測不可能な事情で三年を超えて取得が遅延した場合の処理は、これを公平課税の原則等一般条理による解決に委ねているとみるべきである。

(2) 買換制度の趣旨

資産買換えにつき課税の繰延べを認めているのは、前記のとおり企業の実質資本維持の目的に由来している。買換期間を三年間に限定しているのも、前記のとおり、このような制度の目的を逸脱濫用して、課税を不当に免れることを防遏するのが目的である。したがつて、法人の責に帰せられないやむを得ない事情で取得が三年を超えて遅れたと認められる場合には、何らの弊害も生じないのであるから、課税の繰延べを認めるべきである。

(3) 国税通則法及び法人税法の期限規定

国税通則法一一条は、税務署長において災害その他やむを得ない理由により書類の提出、納付、徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる旨定めている。

また、法人税法七五条及び七五条の二は、確定申告書を、災害その他やむを得ない理由により決算が確定しないため、あるいは会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しないため、期限までに提出できないときは、税務署長は申請により期限を延長できる旨定めている。

このような規定は、税法が定めた期限を遵守できない場合でも、事情によりこれを変更して、納税者に苛酷な負担を課さないよう配慮するべきであるとの法思想に基づいている。

この法思想は、手続的な面だけでなく、租税債務発生の実体的要件を定めた期限を、法人がその責に帰せられないやむを得ない理由によつて遵守できなかつた場合にも、均しく妥当する。

(4) 通達

措置法関係通達六五の七(三)―九によると、「法人の有する買換資産について租税特別措置法(現行法)第六五条の七第四項に規定する事実が生じた場合においても、それが収用、災害その他法人の責に帰せられない止むを得ない事情に基づき生じたものであるときは、同項の規定を適用しないことができる。」とされている。

租税特別措置法(現行法)六五条の七第四項及び六五条の八第六項は、いうまでもなく、単に手続を定めた規定ではなく、法人の租税債務発生の原因を定めた実体規定である。その規定の文言、さらには租税法律主義の原則からも、税務署長の裁量で益金不算入を許容するものでないことは明らかである。

しかるに、右通達は、敢えて右のような事情が認められる限り税務署長は益金算入を行なつてはならない(通達では「適用しないことができる」とされているが、事情が認められる以上益金算入を行つてはならないことは、公平課税の原則から当然のことである。)としている。このような通達の存在は、法人の責に帰せられないやむを得ない事情があるときは、租税債務発生の実体的要件にあつてもその適用を見合せなければならない場合があること並びに税務当局においてもそれを是認していることを如実に示すものである。

(二)  原告の責に帰せられないやむを得ない事情

買換資産である共同住宅(措置法六五条の六第一項別表一の下欄ロに該当)の取得が遅延したのは、以下に述べるとおり、日本鉄道建設公団の所有する湖西線側道の大津市への移管が遅れたこと並びに文化財保護法の改正等により原告に新たな義務が課されたことの二つの理由で、敷地の開発に着手し得なかつたからであり、これは原告にとつて予測不可能な、その責に帰せられないやむを得ない事情によるものである。

(1) 買換事業計画

原告は、京都市内に前記土地建物を所有して映画館「昭和館」の経営を行なつていたが、経営不振のため、措置法の定める買換資産に関する課税の特例の適用を受けて、事業の転換を行なうことを計画した。

そこで原告は、右計画に基づき、右土地建物を売却し、喫茶店及び駐車場を経営すべく用地を求めていたところ、不動産業者であり、かつ、原告と取引関係のあつた渡辺勉の斡旋で甲、乙、丙物件を知り売買契約に至つた。

(2) 甲、乙、丙物件に対する法規制

甲、乙、丙物件は、前記のとおり、市街化区域内の農地であるから、農地法五条一項三号により知事に届出て宅地化できるが、面積が一〇〇〇平方メートル以上であるから都市計画法二九条一項によつて開発許可を受けなければならず、許可を受けるためには同法三三条二号、同法施行令二五条四号により幅員六・五メートル以上の道路に接道することが要件となつている(前記転用届出のために開発許可書が必要である。農地法施行規則六条の二第三項参照)。また、原告が甲、乙、丙物件を買受けた後に、文化財保護法の一部を改正する法律が昭和五〇年七月一日公布(同年一〇月一日施行)され、同法五七条の二第一項後段により六〇日前までに届出るものとされたほか、同年一〇月ころ甲、乙、丙物件を含む一帯が同条一項前段の「埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」に該当する扱いとされるようになつた。

(3) 法規制に対し原告が対処した経過

(イ) 原告は、甲、乙、丙物件について売買契約を締結する前に、あらかじめ日本鉄道建設公団に赴き、原告が前記都市計画法三三条二号の接道として予定している同公団所有の湖西線側道が、湖西線開通予定日である昭和四九年七月二〇日を期して大津市に移管され、大津市道として供用開始の見込みであることを確認した。

(ロ) 原告は、売買契約締結後、措置法六五条の七第一項に基づく取得期間の指定を受けるための資料として、昭和四八年一一月二二日付で同公団から湖西線側道を同公団の使用に支障のないよう使用することを許す旨及び将来大津市に移管する予定である旨の証明書の交付を受けた。

(ハ) 原告は、昭和四九年七月二〇日予定どおり湖西線が開通したので、以後再々にわたり同公団や大津市当局へ直接行き、または電話で大津市への移管を問合せていたが、道路敷地の買取予算や費用の負担を巡つて右両者間の協議がととのわないとのことであつた。

(ニ) 原告は、接道の件の見通しがつき次第開発に取りかかれるよう、昭和五〇年三月北居設計株式会社に対し、甲、乙、丙物件についての「宅地造成工事設計及び各種申請業務」の処理を委託した。

(ホ) 昭和五〇年九月ころに至り、漸く、湖西線側道について敷地は建設省が取得し大津市の管理下に入るとの方針が定まつた。これに伴い、原告の都市計画法に基づく開発許可申請の「開発計画事前審査願」が同月一〇日受理された。

(ヘ) 滋賀県大津土木事務所長は、同年一一月六日付で原告に対し、前記事前審査願について、各種条件を示すと共に、それらをすべて充足してから開発許可申請を行なうべきものと通知してきた。そして右条件の中に、当該土地には、文化財の埋蔵が予想されるので大津市と協議することとの一項があつた。

(ト) そこで、原告は、右の埋蔵文化財についての大津市との協議成立に万全の努力をしたが、大津市は、昭和五一年七月八日に至つて漸く現地を発掘調査のうえ支障がないとの意見を出した。

ところで、問題となつた穴太下大門遺跡は、昭和四八年三月、大津市婦人児童課が保育園用地を買収し、整地工事に着手したところ、大量の瓦が出土したことが契機となつて発見されたものである。元来大津市は、右地域を直接治めている自治体であり、買収地が周知の埋蔵文化財包蔵地であるなら、これを最もよく知つていなければならない立場にある。それが、全く知らずに買収し工事に着工して初めて分つたということは、右地域が周知の埋蔵文化財包蔵地でなかつたことを明瞭に示している。

また、昭和四〇年刊行の滋賀県遺跡目録の添付図面の地図に記入された右遺跡を含む一帯の遺跡は、大部分が京阪電鉄石山坂本線の線路より左側、それも山裾から山間部に集中しているように示されていることが明らかであり、この目録によつては、たとえ専門家でも、甲、乙、丙物件が周知の埋蔵文化財包蔵地であると判断することはできない。

ところが、文化財保護法五七条の二に基づく届出制度の運用は、前記昭和五〇年一〇月一日からの同法改正法施行に合わせ、そのころ大きく変更された。すなわち、同法五七条の四が新設され、国及び地方公共団体は、周知の埋蔵文化財包蔵地について資料の整備その他その周知の徹底を図るため必要な措置の実施に努めなければならないとされ、大津市では、そのため建築指導課の備付図面にいわゆる線引記入して右周知地域を示し、その範囲内の発掘についてすべて届出を要するものとする扱いに変更したのである。

原告は以上の予測不可能な運用変更により前記の届出及び協議を強いられることになつたものであるが、大津市においても文化財保護関係の部署が設置されて間もないころで、経験人員共に不十分であつたため、原告がした届出及び協議の処理に七か月以上の期間を要したのである。

(チ) しかしながら、この時点においては、既に直ちに開発許可申請を行なつたとしても、取得指定期限である同年九月三〇日までに開発許可、農地法五条の届出、宅地造成、共同住宅の完工までに至らないことが明らかであつたばかりでなく、期限を大幅に超え、何時完工に至るか確定し難い状況であつた。

(リ) そこで、原告は、苦慮した末、大津市担当者から、開発許可が不要となるよう原告名義で一〇〇〇平方メートル未満について農地法五条の転用届出を行ない、残りは売主名義で同法四条の転用届出を行なうしかないとアドバイスを受け、やむを得ずこの方法で早期に宅地造成及び共同住宅の完成を期することとしたものである。

(4) 共同住宅取得に至る経過

原告は、乙物件について昭和五一年七月二八日付で農地法五条による転用の届出を行ない、同年八月三〇日付でこれが受理された。これと併行して、住宅金融公庫の融資申請を行ない、同年九月二〇日融資決定がなされた。

原告は、同年九月二〇日共同住宅の建築に着工し、翌昭和五二年三月二二日完成した。また、工事中から入居者を募集し、完成時には六戸の入居者が決定しており、その一部は同月中に入居して、本件取得建物は右時点で事業の用に供された。

共同住宅建築に要した費用は八三九九万二〇〇〇円であるから、期末特別勘定残額を超過しており、後者が全額損金処理されるべきものであることは計算上明らかである。

五 被告の再反論

1  原告の反論2(四)に対する再反論

(一)  措置法通達六三(一)―四、六三(一)―五について

原告は右通達を引用し独自の主張をしているが、これらの通達は措置法六三条の土地譲渡益重課の適用上その取得の日の判定を画一的な基準に定めようとしたものであり、措置法六三条以外の他の条項や法人税本来の所得計算にまでこの「取得の日」を適用し規制しようとしているものではない。

(二)  法人税基本通達二―一―三及び所得税基本通達三六―一二について

右通達は収入の時期を通達として定めたものであつて、「取得の日」を定めたものではない。したがつて、その裏がえしが直ちに「取得の日」になるものではない。

(三)  措置法通達六三(一)―七について

(1) 原告は右通達を引用し、「転用未許可農地(転用未届出農地)の取得は同農地にかかる売買契約成立時(農地の上の所有権移転請求権取得時)にまで遡及して認められていると解しうる。」としているが、前述のとおりこの通達は措置法六三条にのみ適用されるべきものである。

この通達にいう権利の取得とは、契約が締結され、契約内容の履行が行なわれたと認められる日(登記申請書類が引渡され、現金の授受が行なわれる等、実質的に引渡があつて、権利の取得が行なわれたと認められる日)をいうものと解され、契約だけでは、「契約上の権利で現実に取引の対象とされているもの」の取得に該当しないことは明らかである。したがつて、本件転用未許可農地の権利の取得は契約上の所有権移転の日に合致する。

(2) 原告は売買契約書第一二条で「本物件が農地の場合、転用許可が却下されたとき、または農地法五条の許可申請の日から三か月以内に当事者の責に帰すべき事由なくして許可がないときは契約期日に遡つて本契約は効力を失うものとし、甲は受領済の金員を返還するものとする。」と明記しているのであるから、農地転用届出受理以前に売買代金の三二パーセントを支払つているからといつて土地の取得があつたと認めることはできない。すなわち、本件の場合は農地転用の届出があつて初めて「契約の効力」が発生するわけであるから、その届出がなく「契約の効力」すら発生しない甲、丙物件について、昭和五一年九月三〇日までに原告が取得したと認めることはできない。

(3) 措置法六五条の六第一項別表一の買換資産イにいう土地等とは、土地または土地の上に存する権利(例えば借地権、地役権など)をいうのであつて、甲、丙物件のように転用届が受理されるまでは形質変更が認められない農地で、直ちに使用収益できない状態の土地までも、買換資産の対象となる土地として買換の特例の適用を受けることはできない。

したがつて、買換資産の対象となる土地等であるためには、事業の用に供しうる土地及び土地の上に存する権利であることを要し、原告が農地の所有権移転請求権を取得しているとしても、このような権利までも置換えの特例を受ける資産とはならないと解すべきである。

(四)  地方税依命通達不動産取得税三(2)について

右通達こそ本件買換資産の取得の時期を判定する判断資料に最も適切で、「農地法の適用を受ける農地又は採草放牧地を承継取得した場合の取得の時期は同法第三条第一項又は第五条第一項の規定による許可があつた日又は同項第三号の規定による届出の効力が生じた日前においてはその取得はないものであること。」と規定している。本件甲、丙物件の農地転用の効力が生じた日は本件係争事業年度後であり、効力が生じた日以前に現実に土地を取得したと認めるに足る事実はない。

2  原告の反論2(五)に対する再反論

(一)  原告の反論2(五)(1)について

原告の主張する昭和四八年一月二二日には、福井との間で甲、乙、丙物件の売買契約がされたにすぎず、その売買契約による所有権移転時期については特約があり、原告の履行義務に属する残代金の支払すらされていないので、右売買契約締結の事実をもつて、買換資産の取得があつたとすることはできない。

(二)  同2(五)(2)について

農地法五条の届出をしようとする者は届出書を農業委員会を経由して知事に提出しなければならず(農地法施行規則六条の二第一項)、この届出書の提出は、その届出に係る権利を取得しようとする日前であつて、かつ、その取得しようとする権利に係る農地を農地以外のものにする行為に着手しようとする五〇日前までに農業委員会にしなければならず(農地法施行規則六条の二第二項)、さらに、この届出書には、農地以外のものにする行為が都市計画法二九条の許可を受けることを必要とするものである場合には、その許可を受けたことを証する書面の添付を要することとなつているが、甲、乙、丙物件は同一区画でその合計面積は二〇〇〇平方メートルを超えており、これを一括して開発行為をしようとする場合には、都市計画法二九条の許可が必要であり、これらのことから甲、乙、丙物件を農地以外のものにするための届出は、いつでもなしうるといつた簡易なものではない。

(三)  同2(五)(3)について

原告が中間金を支払つても、それは本件買換資産の取得時期を特定する何らの意味を有しない。また、売買契約書第一二条には「当事者の一方がこの契約の条項に違背したときは、相手方はこの契約を解除することができる。」旨規定しているが、これは売買契約条項違背が契約解除理由となり、売買契約の解除がなされうることを明示しているもので、この条項からも原告の甲、乙、丙物件に対する権利は不安定なものである。

(四)  同2(五)(4)について

売買代金総額の約三二パーセントに相当する代金の支払及び仮登記の事実をもつて、甲、乙、丙物件について取得指定期間内に取得したとすることは、本件売買契約の特約からもおよそかけ離れた理論である。

(五)  同2(五)(5)について

当事者間で原告主張のような趣旨の条項が契約上特約されている場合はともかくとして、仮に土地の所有者がその土地を使用せず他の者がその土地を使用していたとしても、このことは本件買換資産の取得時期に何ら関係がない。また、前記のとおり売買契約書第一二条は売買契約の解除がなされうることを明示している。

(六)  同2(五)(6)について

甲、乙、丙物件及び福井所有にかかるその他の土地の昭和五一年度分固定資産税は、福井を納税義務者として納付されている。ところで、公租・公課の負担は売買契約書第九条に定められているところ、何をもつて原告がこれを負担せねばならないのか疑問こそあれ、このことが甲、乙、丙物件取得の一理由となるものではない。

3  原告の反論3に対する再反論

(一)  原告の反論(一)(1)、(2)について

措置法六五条の七第一項かつこ書の規定は、特定の資産を譲渡した期に買換資産を取得することが物理的、技術的な見地からみて困難である場合の特例規定であつて、当該法人の申請に基づいて個別に、合理的に必要と認められる期間について認定されるものであり、したがつて、この規定を適用したうえで、さらにこの規定の定める期間を超えてこれを延長するという特例規定は存しない。

(二)  同3(一)(3)について

(1) 国税通則法一一条は、災害、その他やむを得ない理由が生じた場合において、その理由により税法に基づく書類の提出、納付、または徴収に関する期限までにこれらをすることができないと認められるときに、その期限を延長する途を一般に開いたものである。同条の規定により延長される期限は、国税に関する法律に基づく申告、申請、届出その他書類の提出、納付または徴収に関する期限であり、延長することのできる期間は、その理由のやんだ日から再延長の場合も含み二月以内である。

(2) 同条の特例として法人税法七五条及び七五条の二があるが、これは次のとおり本件に妥当すべき性格のものでない。

(イ) 法人税法七五条の場合は、災害、その他やむを得ない理由により決算が確定しないため、法人税の確定申告書をその期限までに提出することができない場合は、税務署長が申請に基づき期日を指定してその提出期限を延長することができるとする特例であり、これは国税通則法一一条の規定とならんで選択的に適用されることとなつている。この規定は、法人税法の申告の建前が確定決算に基づくことを要件としているのに対し、決算が確定しないという点について、特段のやむを得ない理由がある場合に、右の建前から期限を強行することができないので、延期を認めているものと解され、国税通則法の規定する延長と取扱いを若干異にする必要があると認められるからである。

(ロ) また、法人税法七五条の二の場合は、法人税法には会計監査人の監査を受けなければならないこと、その他これに類する理由により決算が確定しないため、納税申告をその提出期限までに提出できない状況にあると認められる場合には、税務署長が申請に基づき一月間(やむを得ない事情があると認められる場合には税務署長が指定する月数の期間)延長することができるとする申告期限の延長制度の特例で、これについては規定の趣旨から国税通則法一一条との選択適用の余地はない。

(三)  同3(一)(4)について

措置法通達六五の七(三)―九の条項は、昭和四五年四月七日直審法二三ほか「改正租税特別措置法(昭和四四年四月改正)等の施行に伴う法人税の取扱いについて」通達で規定された一条項であつたが、昭和五〇年二月一四日直法二―二「租税特別措置法関係通達(法人税編)の制定について」例規通達により廃止され、同内容のものが右例規通達の六五の七(三)―九として規定されたもので、同様趣旨のものは昭和三八年当時から存在し、「………同項の規定を適用しないことができる。」として法人の有する買換資産についての例外取扱を通達で定めているものであるが、この通達条項は、法がそのような場合にまで措置法六五条の七第四項の適用を予定していないと考えられることから、例外的におかれているものといいうるものであつて、原告の主張は当を得ない。

また、右通達は、買換資産を取得したが収用・災害等によつて一年以内に事業の用に供し得なかつた場合について措置法六五条の七第四項を適用しないこととする旨の通達であつて、本件の場合のように買換資産の取得をしていない場合において類推される余地はない。

(四)  同3(二)について

(1) 市街化区域内にある農地を農地以外のものにするため、農地法五条一項三号の届出をなす場合、その届出書には、その行為が都市計画法二九条の許可を受けることを必要とする場合は、農地法施行規則六条の二第三項により、開発許可を受けたことを証する書面である開発許可書を添付しなければならないが、この開発許可については、各種の厳しい条件があり、都市計画法三三条二項、同施行令二五条四項では、主として住宅の建築の用に供する目的で行なう開発行為の場合、幅員六・五メートル以上の道路に接続していることが規定されている。

(2) 次に、改正後の文化財保護法(昭和五〇年七月一日公布、同年一〇月一日施行)五七条の二第一項は、改正前の五七条の二第一項の条文中、<1>「貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」の次に「(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という)」が挿入され、<2>これらの土地を土木工事等のため発掘する場合の届出の期日「三〇日前」が「六〇日前」に改正されたものであるが、甲、乙、丙物件の存する一帯は、従前から「貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地」と確認されており、改正文化財保護法にいう「周知の文化財包蔵地」と改称される以前からも、営業等を目的とした開発に際しては、発掘の届出を必要とされていた土地であつたこともまた明白である。

(3) 原告は、甲、乙、丙物件に対する前述法規制の存在等を理由として、敷地の開発に着手し得なかつたから原告にとつて予測不可能な、その責に帰せられないやむを得ない事情があり、買換資産の取得が遅れたというが、かかる自明の法規制自体を理由とすることが当を得ないうえに、さらには、かかる規制・制約等の存する土地の上に買換資産として、建物を建築取得しようと計画したこと自体原告の責に帰すべきものというべく、これをさておき、措置法に定めのない例外措置の適用を種々主張することはまさに失当であるといわざるを得ない。

第三証拠<省略>

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  原告は、本件各処分には措置法六五条の七の適用を誤まつた違法がある旨主張するので、以下検討する。

1  原告が昭和四七年一〇月一日その所有にかかる京都市内に所在する土地・建物を九五〇〇万円で譲渡し、これにつき四八年九月期の確定した決算において、措置法六五条の七第一項の規定により、別表二記載のとおり八七五九万円を特別勘定として経理し、この金額を損金の額に算入したこと、原告は、昭和四八年一一月三〇日右特別勘定経理を含む四八年九月期の法人税確定申告書を提出したが、別表三記載のとおり、同日右特別勘定にかかる買換資産を取得する期間につき、措置法六五条の七第一項かつこ書の規定により、同法施行令三九条の六第一八項所定の承認申請書を被告に提出し、さらにそれ以降二回にわたり承認申請書を提出して、最終的には昭和五一年九月三〇日までと買換資産の取得指定期間の認定を受けていたこと、原告が、右買換資産の取得指定期間の最終日の属する本件係争事業年度の法人税確定申告書で、右事業年度中に甲、乙、丙物件を六五四四万一三九〇円で取得したとして、被告に申告をしたこと、これに対し、被告は、「(一)原告において甲、乙、丙物件を取得指定期間内に取得したとしてこれを圧縮記帳し、圧縮額として損金に算入した金額六〇三三万六九六一円のうち、甲、丙物件に対応する金額三三五二万〇五二八円は、措置法六五条の七第二項にいう「取得をした場合」に該らないから、その損金算入を否認し、同条四項一号を適用してこれを益金の額に算入する。(二)原告において申告した期末特別勘定残額二七二五万三〇三九円を、同条四項二号を適用して益金の額に算入する。(三)原告において翌期へ繰越す欠損金として申告した金額五〇万九〇一七円を、法人税法五七条を適用して損金の額に算入する。(四)右(一)ないし(三)の更正処分に伴い、国税通則法六五条一項を適用して過少申告加算税一一六万三二〇〇円を課する。」との内容の本件各処分をしたことは当事者間に争いがない。

2  そこで、原告が甲、丙物件を、前記取得指定期間の最終日である昭和五一年九月三〇日までに、「取得した」(措置法六五条の七第二項)ものであるか否かについて、判断する。

(一)  甲、乙、丙物件が市街化区域内に所在する農地であつたこと、原告が売主福井との間に締結した売買契約によれば、(1)取引期日については農地法五条の許可通知があつた日から三〇日以内とされ(売買契約書第三条)、(2)停止条件として所轄知事に対し農地法による許可申請をするものとされ(同第六条)、(3)また、所有権移転の時期として、甲、乙、丙物件の所有権は残代金を支払い、かつ、登記申請書類を交付した時に移転するものとされ(同第七条)、(4)さらに、契約解除について転用許可が却下されたときまたは農地法五条の許可申請の日から三か月以内に許可がないときは契約日に遡つて本契約は効力を失うものとする(同第一二条)と定められていたこと、甲、乙、丙物件についての売買契約代金、その支払状況、農地法関係手続及び所有権移転登記の経過が別表四記載のとおりであることは、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  ところで、措置法六五条の七第二項にいう「資産の取得」の意義について定めた規定は税法上存しないが、右「取得」は、一応は、税法学上にいわゆる借用概念に属すると解されるので、右資産が土地である場合には、これを私法上の概念である「土地の所有権の取得」と別意に解すべき合理的な理由がない限り、原則として右私法上の概念に従つてこれを解すべきである。もつとも、これと同時に、右租税特別措置の趣旨・目的及び企業会計原則その他関連諸規定の解釈との調和等の観念から、総合的にこれを考察することが重要なことはいうまでもない。

そこでまず、措置法六五条の六及び六五条の七の趣旨・目的について考えるに、これらの規定は、法人の行なう資産の買換えについて、それが土地政策または国土政策等に合致する限りにおいて、譲渡した固定資産の譲渡益に対する課税の繰延べという優遇措置を設け、これによつて実質資本の維持を可能にしつつ、右政策目的の実行を企図せんとするものであるが、この規定が適用されるためには、まず第一に、法人がその「有する資産」を譲渡し、他の「資産を取得」すること、すなわち買換えを行なうことが必要である。右の「有する資産」とは、それが土地である場合、通常の用語例としては「所有する土地」を意味するものであるから、買換資産についても、それが土地であれば、右に対応してその土地の所有権を取得するものと解するのが相当である。

そうであるとすれば、取得する土地が農地である場合、農地法三条または五条による都道府県知事の許可等がなければ所有権移転の効力が生じないのであるから、右農地法所定の手続を経たときはじめてこれを取得したものというべきことになる。

また、措置法六五条の六及び六五条の七は、取得した買換資産を、その後当該法人の事業の用に供することを特別措置適用の不可欠の要件としているが、右六五条の七第一項は、買換資産の取得については税務署長の承認を受けることによりその取得期間(原則一年)を延長しうる旨規定しているのに対し、取得した資産を事業の用に供するための期間については当該取得の日から一年以内とし、税法上これを猶予する制度は設けていない。これは、資産を取得した以上それを一年以内に事業の用に供することは困難でないとの考慮に基づくものと解される。したがつて、右の取得とは、これによつて資産を事業の用に供しうる状態に至るものであること、換言すれば、取得によつてこれを事業の用に供するための行為がすみやかに開始しうるものであることが前提とされているというべきである。そして、この点からみると、農地の場合には、農地法による転用許可がない限り買主においてこれを使用収益すること、すなわち事業の用に供するための行為を開始することができないのであるから、転用目的で農地を取得した場合にあつては、農地法による転用許可を受けて初めてこれを取得したものというべきことになる。また、先にみたとおり、措置法六五条の七は土地政策または国土政策等に合致する資産の買換えに限つて課税の特例を認めようとするものであるが、農地法による転用許可がなされる前に買主において事実上引渡を受けるなどして、これを現実に使用収益することが可能になつていたとしても、これをもつて本件特例にいう取得があつたものと解するのでは、農地法が目的とする農地政策にそぐわないこととなることは否定し難く、右課税の特例の趣旨・目的たる土地政策または国土政策が右のような結果を容認するものとは考えられない。

なお、措置法六五条の六及び六五条の七にいう買換資産は、「土地の上に存する権利」をも対象とするものであるが、これらの規定が法人の事業の用に供するための資産の買換えについて課税の特例を認めたものであることに照らすと、右規定における「土地の上に存する権利」とは、地上権、土地賃借権のような土地を直接利用することを内容とする権利及び地役権のようなその土地の利用価値を増すために他の土地を利用する権利をいうものであつて、転用未許可の農地に係る売買契約上の権利(いわゆる「転用未許可農地に係る権利」)は右にいう「土地の上に存する権利に該当しないと解すべきである。けだし、転用未許可農地に係る権利とは、転用許可を条件とする農地の引渡請求権等を内容とするものにすぎず、転用許可があるまでは買主は引渡を請求し得ないものであり、許可前に引渡を受けても本来売主からその返還を請求されればこれを拒み得ず、引渡をもつて農地を使用しうる権原とはなし得ないからである。また、転用許可を条件とする農地の引渡請求権をも土地の上に存する権利に含ませるならば、非農地の売買契約においても、買主が引渡を受ける前に有する権利をすべてこの土地の上に存する権利として扱うことにならざるを得ないが、そのような解釈は明らかに不当である。けだし、土地の取得以前における売買契約上の権利をすべて土地の上に存する権利としてその権利の取得を認めるとすれば、土地そのものの取得の時期を論ずることの意味が全く失われることになるからである。

(三)  原告は、「資産の取得」を経済的観察に基づいてなすべきであると主張し、簿記会計上の取扱いとの関連性を強調する。そして、例えば、所得というような概念については、私法上には依拠すべき規定もなく、税法独自のものであるから、これの解釈及びその発生時期の判定等にあたつては、経済活動の場における通念ないし正当な企業会計原則等に負うところは大きく、これを経済的観察に基づいて解釈すべきであるとすることには、充分な理由がある。また、資産の取得についても、これが右のような経済的観察ないし正当な企業会計原則に照らして、いまだ企業の資産を構成するに至つていないならば、これに関して課税の特例を認めるべきではないというべきである。しかしながら、買換資産に関する課税の特例は、単に企業会計の健全性や資本の維持を目的とするものではなく、それに加えて、前述のとおりの特定の制度目的を有するものであること、法文上の「取得」の概念は、税法のみならずより広く私法上の一般概念に連らなるものであること等を考え合わせると、当該買換資産が企業会計上当該企業に帰属したことをもつて、本件特例を適用すべき十分な条件とみなすべきであるか否かについては、さらに、既述のような諸点についての考察を必要とするといわざるを得ない。

(四)  次に、原告は、措置法六五条の七第二項にいう取得の意義は、税法の他の条文で用いられている取得という用語について定義した通達を参酌して決定すべきである旨主張して、種々の通達を引用するので、以下これについて検討する。

(1) まず、固定資産の譲渡による収益の帰属の時期について、法人税基本通達(昭和四四・五・一直審(法)二五、但し、昭和五五直法二―八による改正前)二―一―三は、引渡基準を原則とし、契約の効力発生日以後引渡日までの間の一定の日をも選択しうるとし、右改正後の法人税基本通達二―一―一四も引渡基準を原則とし、固定資産が土地・建物等である場合に契約の効力発生日を採ることも認めている。

また、所得税基本通達(昭四五・七・一直審(所)30)三六―一二も、山林所得または譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期について、同様に引渡基準を原則とし、契約の効力発生日を採ることをも認めている。

これらは、収益(収入)の計上時期を所有権その他の権利が相手方に移転した日とする考え方を前提にしながら、特定の売買については、特約のない限り、売買契約締結によつて所有権が移転することになり、物件の引渡が行なわれず代金の授受も全く行なわれていない状態であつても、その譲渡益についての課税だけが先行することとなるため、担税力の点からみて必ずしも合理的でないこと、引渡があれば、同時履行の抗弁の関係からも、具体的に相手方に対し代金を請求しうることとなるため、課税に最も適すると考えられること、企業会計は、売上高の確定に当たつて、いわゆる実現主義または販売基準に基づいて計上することとしていること等の理由から、原則として引渡基準を採つたものというべきである。そして、経済的概念である所得を課税対象とする場合には、当該収益(収入)の計上時期について、必ずしも法的に所有権が相手方に移転した時によることなく、右のように経済的実質に着目した判定基準を設けることには充分な根拠があるといいうるであろう。

しかし、右各通達は資産の取得時期を定めたものでないことが明らかであり、また、措置法六五条の六及び六五条の七に規定する「資産の取得」については、それが右のような収益の発生を課税要件とするものでなく、これによつて課税の繰延べという特例措置を認めようとするものであるから、右各通達とは別の考慮を要することが明らかである。

(2) 次に、措置法六三条に規定するいわゆる土地譲渡益の重課については、譲渡した土地等の取得の日が昭和四四年一月一日以後であるか否かによつて、当該土地の譲渡益がいわゆる重課税の対象となるかどうかが決まり、また、譲渡利益金額の計算において控除される「負債利子」並びに「販売費及び一般管理費」の概算値が保有期間内の帳簿価額の累計額を基礎として計算されることから、土地等の取得の日の判定が重要な意味を持つている。

そして、措置法通達六三(一)―四(昭五一直法二―六改正)は、土地等を取得した日について、原則として当該土地等の引渡を受けた日とし、引渡の日に関し特約がある場合を除き、売買代金の支払額(手付金を含む。)の合計額がその売買代金の三〇パーセント以上になつた日以後引渡までの間の一定の日をもつて法人が取得の日としているとき、これを認める旨定め、同通達六三(一)―五(同右)は、単に代金完済後所有権移転または引渡を行なう旨の条件が付されていても、これをもつて右の「引渡しの日に関し特約がある場合」に該らないとする。

右通達は、前述したとおり、土地譲渡益の重課において、取得時期の判定いかんによつては譲渡益に対する課税関係に大きな影響があることから、これをできるだけ一律に、かつ、外観上明確な事実によつて定めようとしたものである。そして、土地等の譲渡益の計上時期が法人税、所得税との関係では前述のとおり原則として引渡基準によることとなることから取得時期についてもこれに対応して、かつ、外観上も明確な引渡基準を原則として採用したものである。また、売買代金の三〇パーセントの支払をもつてそれ以後引渡までの一定の日を取得時期にしうるとしたのは、それが通常手付金を超えた代金の支払であり、同時履行の抗弁との関係で履行の着手があつたとみられるとの考慮から、これを納税者に有利に選択させようとしたものと考えられる。

しかして、土地譲渡益の重課は、土地を投機対象として得た利益を吸収し、法人の土地に対する仮需要を抑制することを目的として設けられたものであつて、本件における措置法六五条の六及び六五条の七の課税の特例とは制度の趣旨目的を全く異にし、また、前者は、譲渡益に対する課税に関して当該被譲渡資産の取得の時期を判定しようとするものであるのに対し、後者はこれによつて政策目的への適合性を判定し、それに基づいて課税の繰延べという優遇措置を認めようとするものであるから両者は、同じく「取得」を問題としていてもその間には根本的な差異が存する。したがつて土地譲渡益の重課における税務執行上の取扱い基準を、本件課税の特例においても採用しなければならないいわれはなく、解釈としても採り得ない。

なお、同じく取得時期が重要な意味を持つにもかかわらず、その判定基準について土地譲渡益の重課についてのみ通達を定め、本件課税の特例についてこれを定めていないのは、税務執行上も、両者を同一の基準によつて判定すべきでなく、本件課税の特例については取得の時期を一般概念にゆだねるべきであるとの考慮が働いているとも考えられる。そうであるとすれば、前記通達の反対解釈をこそ正当と解すべきことになる。

(3) 転用未許可農地に係る権利について、措置法通達六三(一)―七は、その価値が反映し、現実に取引の対象とされているものを、土地譲渡益の重課にいう土地の上に存する権利に含むものとし、この場合、当該未許可農地の権利に係る土地を取得するに至つたときは、当該土地は当該権利の取得の日から引続き有していたものとして取扱う旨定めている。

これは、転用未許可農地に係る権利であつても、代金の相当額が支払ずみであるものまたは現実に引渡を受けたもので、土地の価値が反映しているものにあつては、これが転々と売買される事例が存在することに鑑み、これをも土地譲渡益の重課の対象としなければ、その制度の趣旨がその部分において失われることとなるので、これをも土地の上に存する権利に含ませて譲渡益に重課を課すこととし、この関係で農地の取得時期については納税者に有利な取扱いをしたものと考えられる。

しかし、先に述べたとおり、本件特定資産の買換えの場合の課税の特例は、土地譲渡益の重課と制度の趣旨目的を異にし、右の如き通達も設けられていないのであるから、同一に扱うことは相当でなく、前述のとおり転用未許可農地に係る権利を土地の上に存する権利に含ませることはできず、また、転用未許可農地に係る権利の取得をもつて、これと別個の概念である農地の取得があつたものと扱うこともできない。

また、転用未許可農地等の譲渡による所得について、改正租税特別措置法(昭和四八年四月改正)等の施行に伴う所得税(土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例関係)の取扱いについて(昭和四九年一月三一日直所二―四)第二―三は、取得または譲渡が未許可または未届出であつても措置法二八条の六第一項の規定の適用がある旨定めているが、これも先の法人の土地譲渡益の重課と同じ趣旨から規定されたものと考えられるから、同様に本件の課税の特例の解釈に適用すべきでない。

(4) 地方税依命通達不動産取得税三(2)は、不動産の取得の時期は、契約内容その他から総合的に判断して現実に所有権を取得したと認められるときによるものとし、農地法の適用を受ける農地を承継取得した場合は、同法三条一項または五条一項の規定による許可があつた日または同項三号の規定による届出の効力が生じた日前において、その取得はないものである旨定めている。

これは、不動産取得税がいわゆる流通税に属し、不動産の移転の事実自体に着目して課せられるものであつて、不動産の取得の原則的な解釈に基づいてこれを定めているものと考えられる。

そして、本件の特定資産の買換えの場合の課税の特例についても買換えの事実自体に着目して繰延べの特例を認めようとするものである点で類似するところがあり、本件課税の特例における取得の意義を解釈するについても十分に参考とすべきである。

(五)  そこで、(二)以下において検討したところを総合して考えると、措置法六五条の六及び六五条の七にいう買換資産の取得の意義を、私法上の所有権取得の概念と別意に解すべき合理的な理由は見出し難く、かえつて農地等においてはこれを同意義に解してこそ制度の趣旨に合するとも見うるのである。そこで、右資産の取得とは、それが土地である場合には土地の所有権の取得を意味すると解すべきこととなるが、本件において、甲、乙、丙物件が市街化区域内に所在する農地であることは前述したとおりであるから、結局、原告がこれを買換資産として取得したといいうるためには、少なくとも取得指定期間の最終日である昭和五一年九月三〇日までに、滋賀県知事に対して、農地法五条一項三号に規定する届出を行なうか、または、同条一項本文に規定する許可を受けなければならないことになる。

しかしながら、原告は、別表四記載のとおり、甲、丙物件については同年九月三〇日までに右手続を経ていないものであるから、結局、これらを取得したとはいえないことが明らかである。

なお、付言するに、仮に原告の主張するように取得について引渡基準を採つた場合でも、本件処分を違法とすべきか否かは、はなはだ疑問である。すなわち、原告が甲、丙物件について売主福井から引渡を受けたと主張する日時である昭和五一年九月九日は、証人熊谷次雄の証言により真正に成立したものと認められる甲第二八号証によれば、原告が甲、丙物件について、乙物件上に行なう共同住宅建築の工事の便宜のため福井から、「現状有姿の休耕田としての農地法に抵触せざる」限りで特に使用を許された日時にすぎず、これをもつて甲、丙物件について右日時に引渡があつたとするには十分でなく、また、証人熊谷次雄、同矢村彰一の各証言によれば、原告が甲、丙物件を駐車場とするために整地したのは、乙物件上の共同住宅が完成した昭和五二年三月ころであることが認められ、その他原告が昭和五一年九月三〇日までに甲、丙物件の引渡を受けたとの事実を認めるに足りる十分な証拠はないのであるから、結局引渡基準によつても原告が甲、丙物件を取得指定期間内に取得したものとは断じ難いといわざるを得ない。

(六)  原告は、予備的に、甲、丙物件の取得が遅れたのは予測不可能な、原告の責に帰せられないやむを得ない事情によるものであるから、措置法六五条の七第二項にいう「取得をした場合」に該り、同条四項一号の益金算入を行なうことは許されない旨主張するが、後述するように、原告は同条一項の定める最大限の取得指定期間を認定されていたもので、制度上これを超えてさらに延長しうる例外規定は存しないのであるから、結局同条二項の適用を受けることはできず、そのような場合に、同条四項一号に基づいて益金に算入することが許されないとする理由はない。

(七)  以上のとおり、甲、丙物件については、取得指定期間内に取得をした場合に該らず、これに対応する金額の損金算入を否認し、同条四項一号による益金への算入が許されないとする理由も認められないところ、右対応金額の計算について原告は争わず、計算上も正当であると認められるので、これによつて算出された三三五二万〇五二八円について損金算入を否認し、同条四項一号を適用した本件更正は適法である。

3  次に、原告は、措置法六五条の七第一項の定める期間内に、予測不可能な、かつ、原告の責に帰せられないやむを得ない事情で買換資産を取得し得なかつたときは、同条四項二号を適用して期末特別勘定残額を益金に算入すべきでない旨主張する。

しかし、法人が、その資産を譲渡したことにより生ずる譲渡益について措置法六五条の七所定の課税上の優遇措置を受けるのは、法人が取得指定期間、すなわち当該譲渡をした日を含む事業年度の翌事業年度開始の日から同日以後一年を経過する日までの期間、もし措置法施行令三九条の六第九項で定める工場等の敷地の用に供するための宅地の造成、工場等の建設及び移転に要する期間が通常一年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情があることにつき税務署長の承認を受けたときは、当該買換資産の取得をすることができるものとして、同日以後二年(すなわち翌事業年度開始の日から三年)以内において当該税務署長が認定した日までの期間内に、買換資産を取得した場合に限られることは、措置法六五条の七の規定上明らかであり、さらにこの規定の定める期間を超えてこれを延長することができるとの例外規定は存しない。

そして、原告は昭和四七年一〇月一日その所有する土地建物を譲渡し、被告から別表三記載のとおり取得指定期間を右法条の定める最大限の昭和五一年九月三〇日までと認定されていたものである。

原告は、予測不可能な、原告の責に帰せられないやむを得ない事情で取得指定期間内に買換資産を取得し得なかつた場合に措置法六五条の七第四項二号を適用すべきでないとする根拠を縷々主張するが、同条一項、二項の規定が、既に発生した譲渡益に対する課税について、例外的措置を定めたものであること及び課税処分の大量的、定型的処理の要請等に鑑みると、同条項の解釈についてはその条文に即してこれを厳格に解すべきであり、また、同条一項かつこ書は、前述した一定のやむを得ない事情がある場合に取得すべき期間の延長を例外的に認めているものであるところ、右かつこ書自体が、買換資産の取得期限を延長すべき限界を明確に規定していることに照らせば、仮に原告主張のとおりの事情が存し、かつ、それが予測不可能な原告の責に帰せられないやむを得ないものであつたとしても、税務署長が右法条の定める最大限をもつて認定した取得指定期間を超えて、さらに法の規定しない例外を認めるべきものであるとは到底解し得ない。

したがつて、原告申告の期末特別勘定残額二七二五万三〇三九円を、取得指定期間の経過により、措置法六五条の七第四項二号を適用して益金に算入した本件更正は適法である。

4  以上の更正処分に伴い、原告の申告した翌期へ繰越す欠損金五〇万九〇一七円を法人税法五七条を適用して損金に算入した本件更正は適法であり、原告の申告額及び以上の更正処分による数値を基礎に算出した本件過少申告加算税の賦課決定処分もまた適法である。

三  以上の次第で、原告の本訴請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 田坂友男 小田耕治 森高重久)

別表一~四<省略>

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